
8月が近づくも梅雨らしく連日雨が続く7月25日。例年夏の時期には大沼でツキノワグマの出没が増加します。そんな大沼でクマの痕跡を探し暮らしぶりを知ることで理解を深めるイベント「夏 湿原に集まるクマたちの痕跡を見る」を開催しました。

当日は雨は降っていませんでしたが、朝から深い霧が大沼を隠していました。こういった見通しの悪い状況ではクマもこちらに気づくのが遅れたり遭遇の機会が増えたりします。事故防止のパトロールも兼ねているので気を付けて行きましょう。

まずは館内で大沼後生掛でのクマの生態をご紹介。季節ごとの食べ物やクマ本来の習性など、自動撮影カメラの映像も見ながら大沼に生きる姿を知ってもらいました。

スライドでのレクチャーが終わるといざ痕跡探し! クマは木の上、藪の中といたる所にいます。目と耳と、時には鼻も使ってパトロール。

木道を歩いてすぐ、画像手前のミズバショウが倒れている箇所を発見。木道沿いから林の中へ踏まれた道が続いていることからも、クマが通った跡と分かります。ここ数日になって急激にこうした場所が増えてきています。

「クマが通った跡だと思わなかった」「ここまで来ていたんだ」などの声が上がりながら写真撮影。夏はクマの食べ物が少なくミズバショウの葉と実を求めて大沼へやってくるようになることをこうして目の当たりにして理解を深めます。

その後も食事や休憩で登るときに木に付いた爪痕やブナの実など、八幡平に棲むクマの生活を切り取って紹介していきました。

今年に入ってからクマに齧られたベンチもあります。噛んだ跡に体を擦り付けたのか体毛が残っていました。塗料の匂いが気になるのか、大沼だけでなく八幡平の様々な場所で標柱の噛み跡、ひっかき傷がよく残っています。

草木が生い茂ってきたことで曲がり角では見通しが悪く不意の遭遇に注意しなければなりません。そんなときのために大きい音でクマへアピールするベアホーンを使ってみました。ホイッスルよりも圧のある音でこちらまでびっくりしてしまいそう。

対岸では日陰の箇所も多く、それでも湿原にはミズバショウがたくさん。


熟したミズバショウを手に取ってみます。水で溶けて種が露出するように出来ていて、地面に落ちた実はドロドロ。シュウ酸カルシウムやアルカロイドなど有害な成分を含み、人によっては触るだけで影響があるので無闇に持つのは避けましょう。私はこの後しっかり手を洗いました。

霧が濃くクマがいないか探すのは難しい日でしたが、どこか幻想的な大沼の様子もまた魅力的。


クマの痕跡を探すイベントですが、大沼の自然も知ってほしいところ。気分転換にモウセンゴケの花を観察しました。食虫植物ではありますが小さな可愛らしい花を咲かせます。


ここで舞台は大沼からキャンプ場へ。クマスプレー試射の時間です。説明している隙に後ろからやってきた(運ばれてきた)クマのはく製。毎年お世話になっているこの子に今年も標的のモデルをしてもらいます。

有効射程は10mほどが主流ですが、より効果のある距離は5m以内。メジャーで5mを測ってからいざ噴射! 今回は刺激成分の無い試射用の物ですが、本物は赤や橙色をしていたりします。

自分ならどこに携行しておくかイメージしたり…

実際のときを想定してクマから目を離さず構え、顔を手で覆いながら使います。

全員が試射を終えたところで、本物も使ってみることに。少し風向きが変わるだけで肌がピリピリする感覚や喉に違和感を覚えます。使うときはもちろん、持ち歩くときや休憩中など管理には十分注意しなければいけませんね。

最後に朽ち木のアリの巣を掘り起こした痕跡を観察しました。爪痕も残りクマが実際に暮らしている様子を見ることができました。
里でも目撃が増え恐さを覚える話題ばかりですが、山に適応して生きるクマについて実感できるイベントになりました。クマスプレーも使い、クマへの心構えや対応も学びました。これを機に、さらに登山や自然散策を楽しんでほしいと思います。
さいとう





