初夏の空気を感じる7月の八幡平。そんな八幡平の東側に位置する茶臼岳と源太森の二大展望地、そして黒谷地湿原と八幡沼湿原を巡り雄大なパノラマと高山植物を堪能する「茶臼岳~八幡平縦走トレッキング」を開催しました。

この日の朝は岩手山を囲むように雲海が広がっていました。天気は多少好転したものの、流れる雲も多く展望地の眺めはどうでしょうか、一抹の不安が頭をよぎります。

見返峠駐車場から茶臼岳登山口まではバスで移動。準備体操を済ませ、いざ登山開始! …の前に登山口の道路沿いで八幡平固有種のハチマンタイアザミを見つけました。花の重さで項垂れるように咲いています。

茶臼岳の登山道は公園管理員の方々によって刈払いがされ、とても登りやすくなっています。感謝しながら上りの道で脚を慣らしながら登っていきます。一息ついて後ろを見ると、雲が着々と辺りを覆ってきていました。

八幡平山頂では見られないでコメツガの雌花。赤い松ぼっくりの子供という印象を受けます。橙色の雄花からは花粉が飛ばなくなっており、既に受粉は終わっているのでしょう。

地滑りも多く登山道上でも地肌が見えている場所があります。そこでカメラを構えて、先にあるのは…

まだまだ盛りを迎えるイワカガミでした。地滑りが起きる前は下の方まで咲いていたのでしょうね。

道すがら、ベニバナイチゴもたくさん見てきました。「実ができたら登りながら食べられるね」なんて食い意地の強い会話もしたり。魅力的ではありますが、特別保護地区のものは野生動物に譲ってあげましょう。

ミヤマハンノキの葉が折りたたまれて吊るされています。誰の仕業?

正解はナミオトシブミ。首の長い方がオス、短い方がメス。当日私は逆に言ってしまった気がします…ここで訂正させてください。葉の中に1つだけ卵を産み、幼虫が身を守るため、食べるために葉を巻いています。

遠くの景色や花々を楽しむことも登山の醍醐味ではありますが、参加者の皆さんも一度目を向ければ小さな生きものにも興味深々。オトシブミの名は昔、声に出しにくい話を巻物に書いて道に落とした「落とし文」の文化があり、その様子と重ねて名づけられました。この子達は落とさず木に吊るしたままにする種類のようです。

茶臼岳山頂を前にオオシラビソのてっぺんで鳴くルリビタキのメス。メスは尾羽だけ瑠璃色でそれ以外は地味な見た目なんです。オスは目立つために派手な色になりがちですが、メスは見つからない方が都合がいいんですね。

いざ1つ目の展望地、茶臼岳に到着! み、見えない…。既に辺りは雲の中、眼前にあるはずの岩手山も今日は白一色でした。雨男の名は返上したつもりが雲が付いてきてしまったようです… この先の天気が良くなるよう願っておきます。

黒谷地湿原までは林の中の下り坂。あまり景色は変わりませんが、道沿いのイワカガミやミツバオウレンに元気をもらい進みます。

30分ほど歩くと湿原に広がった花々が出迎えてくれました。イワイチョウに盛りを迎えているチングルマ、コバイケイソウも花を咲かせています。

待ってましたと全員で撮影会。思わず口角が上がってしまう嬉しさです。

黒谷地湿原に到着し、お昼休憩です。生憎の曇り空ではありますが、降られることもなく何とか持ってくれそうです。止まれば少しひんやりする、湿度のある天気でした。

チングルマは花が終わり果柱が開く前のものも。ねじれて風に揺れる姿も可愛らしいです。

ここからはまた八幡平へ向け上りが続きます。洗堀された登山道は年々深くなって、今では地面の高さに目線が来ます。

キヌガサソウも咲かせたばかりの綺麗な状態で見られました。「終わったと思っていたのに見られて嬉しい」との声もあがり再び撮影会。

サンカヨウとミネザクラもたくさん花をつけ今日のために見頃を取っておいてくれたかのよう。源太森へ向け眺望を期待しながら進みます。

ついに源太森に到着!岩手側はこの通り真っ白。では秋田側、八幡平の景色は…

八幡沼がはっきり見えています! 上空には暗い雲が掛かっていますが、ちょうど流れていくタイミングで第2の展望地に着くことができました。

八幡沼を背景にパシャリ! 360度とはいかずともこうして開けた景色が見られるのは頑張った甲斐があるというものです。

ここからは八幡沼の湿原を歩きます。広がる湿原を賑やかす植物たちに、一人ひとり違ったお気に入りの被写体をカメラに収めていきます。

ヒナザクラは今が最盛期。一斉に風に揺れる姿は見入ってしまいます。

ミツガシワも順調に咲き始めています。

見つけにくいヒメシャクナゲ。皆で地表を探して撮影。実は湿原のいろんな所に咲いていますよ。

陵雲荘周辺を縄張りにしているウグイス。私たちが近くにいても懸命にさえずりアピールしていました。首を伸ばし、お腹を震わせて大きな声を響かせます。

八幡平山頂展望台に到着! この頃には晴れ間も見え、日差しが暑くなってきました。ゴールはもうすぐ、油断せず行きましょう。

見返峠駐車場までの石畳の道ではオオシラビソの雄花と雌花を観察して進みます。コメツガとは異なり雌花は上に付き木霊が並んでいるように見えます。

今年の熱い視線も落ち着き水面が半分以上見えてきた鏡沼。とは言え今年は雪が多く例年なら無くなっている氷もまだありました。これから山頂も暖かくなり夏を迎えます。あっという間に融けてしまうことでしょう、今年の雪も見納めになりそうです。

さて、今回のイベントでは湿原の花々に注目してきましたが、全体を通してラン科のチドリの花も楽しむことができました。こちらは一般的なハクサンチドリ。紫色の小さな花が集まって咲いています。

対してこちらは真っ白なハクサンチドリ。色素の薄いものはあったりしますがここまで白い個体はなかなか見れません。

この地域では数が少なく珍しいノビネチドリもありました。ハクサンチドリが多い中柔らかい印象を受ける花があったらよーく見てみてください。きっとそれがノビネチドリかもしれません。

茶臼岳まで文字どおり先の見えない行程となり不安もありましたが、雨にあたることもなく青空を拝むことができ晴々としたゴールを迎えることができました。

本格的な夏を迎える前の湿原を堪能し、初夏の空気を存分に味わうことができたイベントでした。

   さいとう