6月9日、「深山に咲く花キヌガサソウに逢いに行く 長沼新緑トレッキング」を開催しました。
雲の多い空に、雨が降らないか不安という参加者の声もありましたが、雨の予報は出てないよと今しか見られない美しい花々に逢いに出発です。

足元にツクバネソウやマイヅルソウが咲くブナ林の中は、エゾハルゼミの声がシャワーのように降り注いでいました。

この春は、ブナが沢山の花を咲かせました。
あまりの数に、膨らみ始めた実が生理落下で登山道のいたる所に落ちています。
一つ拾って中身を確認中です。

白く怪しげな容姿のギンリョウソウ。
周辺の菌類と菌根を作り、そこから栄養を奪って生きています。
そう言われると、またまた妖しさが増してきます。
「菌従属栄養植物」とかいうそうで…

何を見つけたの?
周囲で賑やかに鳴くエゾハルゼミの抜け殻でした。
長い期間を暗い地中で過ごし、漸く地表に這い出して古い殻を脱ぎ捨てて生まれ変わった彼らは、その思いのたけを何かにぶつけるように渾身の力を込めて鳴きます。

ユキザサの花はまるで雪の結晶のようにも見えます。

コケの上にヤマアカガエル。
「あ、いた!」「あっちに行ったよ」と賑やかな皆さん。

陽が差すとブナ林の中も明るくなり、緑が鮮やかに。

つんつん…
見つけたツキノワグマのフンの中身は植物の繊維がたっぷり。
タケノコの皮のような物もありました。

倒木のクジラタケをひっくり返したら、何やら黒い粒々が。
ルーペで覗いてみたら、コブスジツノゴミムシダマシという、長くてややこしい名前の昆虫。
サルノコシカケの仲間のキノコを食べるらしいです。

お尻の木は今年も健在。

大谷地の入り口で、コバイケイソウが花芽を膨らませていました。
どうやら、今年はコバイケイソウの当たり年みたいです。

湿原の、最盛期を迎えたワタスゲが風にゆらゆら。

咲き始めたばかりのイワカガミも可愛らしく、花を見つける度に撮影に大忙し。

レンゲツツジは漸く咲き始め。
と、上に下に、あっちにこっちと忙しく見て歩いていると…

ミズバショウの葉の上でお昼寝中のモリアオガエルを見つけました。
どんな夢を見ているのかしら…
っていうか、カエルも夢を見るの⁉
起こしては可哀相なので、そっと写真を撮って通過します。

湿原の脇を通って林の中に入るとシラネアオイがお出迎え。
この花が見えると、いよいよキヌガサソウも近くです。

キヌガサソウと同じような環境に生えるらしく、サンカヨウも沢山。
湿原から飛んできたワタスゲの綿毛が花に引っ掛って風に吹かれていました。

ズダヤクシュに囲まれて咲くキヌガサソウ。
お待ちかねの花に、「あっちも綺麗」「こっちも良い」と騒がしくなります。

綺麗な色のキクザキイチゲも見てあげて。

最初の群生地を過ぎて長沼到着です。
沼の畔のブナに捲いたピンクテープは、上が3月24日、下が4月20日の雪の高さ。下のテープで地面から2mを越えています。
いったい、厳冬期にはどれ程の雪が積もるのでしょうか。
何はともあれ、その多量の雪のお陰で、美しい景色や花々が楽しめるのです。

新緑に染まる長沼をそよ風が渡り、水面を泳ぐカイツブリの姿も見られました。
いつ来ても長沼は良いなあ…

ムラサキヤシオにツバメオモト、オオカメノキと、またしても上を見たり下を見たり。
綺麗なものには自然と目が行きます。
そして長沼の奥のキヌガサソウ群生地へ…

期待通り、沢山のキヌガサソウが待っていてくれました。
あっちにもこっちにも、毎回ですが、何処を写真に撮ったら良いのか迷ってしまいます。
そして、何やら指さしながら数える人たち。
車座に開いた葉の数と、白い外花被片の数は一緒とされていますが、数が一致しない物を見つけたようです。
まあ、多々ある事なので、あまり細かい事は気にせずにはなを楽しみましょう。

少し地味だけど、エンレイソウも忘れないでね。

今年の花は、春の暖かさのせいか少し早めに咲いたものが多かったので、キヌガサソウも影響を受けて早めに咲き始めました。
ですが、キヌガサソウは最盛期、その他の花々も存分に楽しむ事が出来たイベントとなったのではないかと思います。
また、花々だけではなく、ブナ林に暮らす生き物たちの様子も少しですが感じ取ることが出来たと思います。
この後も自然の営みが滞りなく続き、来年も美しい花々に出会える事を願います。

     くどう