
秋は一雨ごとに深まりを見せるもの。
前日の雨は上がったものの、上空に入り込んだ寒気の影響で冷え込みが強くなった10月19日、鮮やかな黄色の世界を歩く「長沼 黄葉のブナ林トレッキング」を開催しました。
八幡平ビジターセンターのある大沼周辺の木々の色付きはピークを迎えているので、黄葉の中を歩くのを楽しみにしていた参加者の皆さんの期待が、否が応にも高まります。

色とりどりに染まった美しい光景に、自然と笑顔になる皆さん。

淡く優しい色合いに染まったブナ林の中へ。
足を止めて見入ってしまうのも仕方がありません。
だって、こんなにも綺麗なんだもの…

あちらこちらに目を配りながら歩いて見つけたのはサカヅキキクラゲ。
「食べられるの?」
必ずと言っていい程聞こえる声です。
どんな観点からでも興味を示して頂けるのは有難い事です。

色々な黄色に包まれて一休み。

見上げれば日に透かされた葉が風に揺られてキラキラと輝きます。

ブナだけでなく、林床の低木類も黄色く色付く中をゆっくりと。

大谷地に到着。
湿原を取り囲む山肌は、秋風が落とす絵の具で綺麗に染め上げられていました。



そんな景色を見ていて目に付いたのは、アキノキリンソウとタチギボウシ。
散布の方法は違えども、どちらも未来へ命を繋ぐための種子散布の季節です。

剥がれかけの表皮が風に揺れるダケカンバに、なんだか物寂しさを感じてしまいます。

ひんやりとした空気の中、落ち葉の道は「カサカサ」「サクサク」と小気味よい音を奏でてくれ、楽しい気分で歩くことが出来ます。


長沼に到着。
目の前に広がる光景に、笑顔にならずにはいられません。



濃い緑の針葉樹が、鮮やかな紅葉を一層引き立てます。
落葉したダケカンバの白くゴツゴツとした枝ぶりも見応えがある長沼の景色を見ながらお昼休憩。


どこを切り取っても画になる長沼。
風の止んだ一瞬の水鏡は、見る人の心を掴んで離しません。
どれだけ見ていても飽きない景色です。

長沼を堪能して、木漏れ日の中をゆっくりと帰ります。


苔むした倒木に見つけたのはニセズキンタケ。
指でプニプニ。
グミのような触感を皆さんで楽しみました。

この秋、なかなか見る事の無かったツキノワグマのフンを発見。
ブナを始めとする堅果のみならず液果も無く、木の実が不作と言われる中で彼らは何を食べているのかとフンを調べる事に。


実りの秋と言えども、ブナの実の殻や植物の種などは見当たらず草本の繊維ばかりです。
冬ごもりに向けて脂肪をたくさん蓄えなければいけない彼等にとっては厳しい状況になっているようです。

ハッシュタグの木。



これは何?
コウヤクタケの仲間みたいですが、虫眼鏡で覗いてみたらスポンジのように小さな穴がいっぱいです。
あっちを見たり、こっちを見たり、秋のブナ林を楽しみながらビジターセンターへと帰ったのでした。
今回のイベントは、風が冷たい中での開催となりましたが、黄葉と落葉で明るくなったブナ林に木漏れ日が差し込むと暖かく感じ太陽の有難さを実感することも出来ました。
黄葉のみならず、秋のブナ林の様々な光景を参加者の皆さんと分かち合えた気がします。
さて、次は冬のイベントですね。
また、沢山の方々に参加して頂ける事を願っております。
くどう