
前夜の激しい雷雨が嘘のような青空が広がった4月19日、春の気配の漂うブナ林を歩いて雪解けの沼を巡る「よんご沼残雪トレッキング」を開催しました。


眩しいながらも柔らかな春の日差しを受けながらザクザクと雪を踏んで歩くと、鮮やかなオレンジ色の実をつけたアカミノヤドリギを見付けました。
残念ながら?種子散布者の鳥たちに食べられずに残っていたようです。

穏やかで、あちらこちらから聞こえる小鳥たちの声も心地好い早春のブナ林。
木々の影が雪の上に伸びます。



ブナの森にはツキノワグマの痕跡がそこかしこに。
夏の間に樹洞に入って休んだり場合によっては冬ごもりに使ったり、大きな樹洞のあるトチには無数の爪痕が残されていました。
クマ居ないかな~とノックしてみましたが、残念ながら気配はありませんでした。
今シーズン初クマにあえるといいな~


見上げればクマ棚。
見晴らしも良さそうだし、あんな高い場所でご飯を食べれば気持ち良いんだろなあ…
などと勝手に思いを巡らせますが、クマは冬を生き延びるために必死で食べていただけなので、そんな事は微塵も思ってもいないはず。
ん?これも勝手な想像??
クマの気持ちはクマにしか解らないか。

足を止めて見つめているのはカメラ。
ではなく…

イベントタイトルにもなっている「よんご沼」。
沼の水面を覆う氷の縁に水が貯まり始めたばかり。

水面が現れた場所で記念撮影です。
澄んだ水に映る青空と水中の氷の色が綺麗ですね。

四合五尺沼も漸く水面が開き始めていました。
氷の暑さは沼底まで届く程。


ヤマガラが雪の上を忙しく動き回りながら餌探しをする斜面をゆっくりと。

ふり返って見下ろした四合五尺沼は青く見える氷が綺麗。
氷りの下は光が入り込まないので、その暗さが僅かに開いた水面から伺うことが出来ます。

雪の上にモモンガの食痕。
オオシラビソの雄花の冬芽を食べた後です。

雪の上には色々な物が見られます。
樹上から落ちた地衣類「ヨコワサルオガセ」をじっくりと観察。

名無しの沼は小さな雪の窪地のような状態。
まだまだ沼の姿が見え始めるには時間が掛かりそうです。


立ち枯れの木に見つけたのは雪の影響を受けずに残ったホコリタケの仲間と、粘菌のフンホコリの仲間の子実体。
夏場は藪の中で行くことが出来ない場所を残雪を渡って、こういう小さなものを観察できるのが楽しいと思うのは私だけでしょうか。

藪は雪の下に隠れて樹間が広く見通しが良い林の中を和気藹々とおしゃべりしながら。

厚い氷に閉ざされた真っ平らな長沼の上を歩く贅沢。
もう直ぐ出来なくなる今だけの体験です。


オオシラビソやコメツガの濃い緑の中にダケカンバが目立つ長沼の外輪。
雪と青空のお陰で、いつもより引き立って見えるのは気のせいでしょうか。


長沼に注ぐ流れも見え始め、その中に見つけたのはドクゼリの根茎。
「ワサビに似ているかも」って、いやいや食べちゃダメだよ30分くらいで中毒症状が出てくるよ。



良さげな斜面を見つけると尻滑りを始めるリピーターの皆さん。
今年度最初のイベントですが雪の上を歩くイベントは次の冬まで無いので、思いっ切り楽しんでいました。
厳冬期との雪質の違いに季節の移ろいを感じ取る皆さんは、この後も手ごろな斜面を見つける度に滑りまくるのでした…

樹洞のあるシナを見つけて何やらゴソゴソ。

根元にあった小さな穴から中の様子を伺うと、内側に沢山のクマの爪痕が残されています。
一体、どれだけのクマがこの樹洞を利用してきたのでしょうか。

向かうはシナの巨木。


それぞれに大きさを確かめたり樹洞を覗いたり。

そして縁取りが大きく出来上がったツボ沼へ。
八幡平山頂近くのドラゴンアイはまだ雪の中ですが、こちらは進捗が早いようです。
沼によって水の色も違って見えるのも面白いところ。

大きなオオシラビソの倒木で、普段は見ることの出来ない木の先端付近を観察。

葉の間の小さな白い球は樹液が固まったもので、中に雌花の花芽が隠されています。
雪や寒さから花芽を守るオオシラビソの戦略です。


穏やかなお天気に動かずにいられないのは人も動物も同じ。
何処へ向かったのでしょうか、ニホンカモシカとツキノワグマの足跡を見つけました。
夜間の大雨が上がった後に残された足跡に辺りを見回しましたが姿は見えず…
うーん、会いたかったなあ…
今回のイベントは八幡平の山腹に点在する湖沼を巡り、それぞれの目覚めのようすの違いと春を迎えて動き始めた山の雰囲気を感じ取ってもらえたのではないかと思っています。
まだ雪ばかりで何もないと思っている方も多いと思いますが何もない事は無く、残雪の上にも様々な物が見られたり森に息づく生き物たちの気配を感じることが出来ます。
何よりもピンポイントの好天をつかみ取った、持っている参加者の皆さんと一緒に歩けた事が最高だったと思います。
グリーンシーズンへ向けて、この先どんどん山は賑やかになっていく事を思うと楽しみが膨らんでいきます。
くどう