3月12日、朝から青空の広がる穏やかなお天気の下、19日開催予定の「早春の栂森スノーシューハイキング」の下見に行ってきました。

霞んだ空に稜線がくっきりと見える国見台や栂森。
秋田八幡平スキー場から見るこの時期ならではの景色に、今日はどんな光景が見られるのか期待が膨らむ一方です。

スタート直後、連日の好天に雪解けも進んでいるようで、あちらこちらに大きな雪まくりが見られました。
まだまだ雪に覆われた山にも、確実に春が近づいています。

経由地のベコ谷地まではブナ林の中を進みます。
積雪で観察しやすくなった地衣類、ブナの木に残されたツキノワグマの爪痕、立ち枯れの木に生えるカワラタケの仲間、ニホンカモシカの糞、雪上に落ちたブナの殻斗など、目を引くものがいっぱいです。
一つ一つをじっくりと観察しながら、いろいろと観察対象物を探しながら歩きたくなるのですが、長い行程は始まったばかり。
この先の出会いに期待をして歩みを進めます。

ベコ谷地。
実はこの日は「ベコ谷地スノーシューハイキング」のイベント開催日。
いろいろと事情があって、くどーさんは一人で栂森の下見に出かけてきました。
広い雪原と化したベコ谷地を独り占めです。
イベントの御一行様が到着前にベコ谷地を縦断させて頂きます。
この日、まだ誰も歩いていない雪原に足を踏み入れる優越感に浸らせて頂きました。

ベコ谷地の真ん中から、これから向かう栂森が木立の向こうに見えていました。
まだまだ先は長い…
が、単純なもので、お天気が良いというだけで気持ちも足取りも軽やかに進むのでした。

ベコ谷地を縦断し、再びブナ林に入ったところでシジュウカラのお出迎え。
ずっと鳥たちの声が聞こえてはいましたが、なかなか姿を捉えられずにいたので、気分も上がります。
春めくブナ林で、鳥たちも忙しそうに動き回っているようです。

遠くに、見た事のある白いお尻。
ホシガラスの姿を見つけ、そっと近づいて観察。
近くのブナの枝分かれ部分に貯食しておいたのでしょうか、実を取り出しては細い枝に移動して食べるを繰り返していました。
なかなか進めないなあ…
少々困惑気味ですが、嬉しい出会いを楽しませてもらいました。

足元にはノウサギの足跡が幾つも残されています。

先程のホシガラス。
実は、こちらに興味を持ったのか着かず離れずで栂森まで一緒に移動してくれました。
なんだか、観察しているつもりだったのが観察されている気分です。
何はともあれ、一人の山行のお供が出来ました。

標高を上げるにつれて少しずつ森の様子が変化し、ブナに代わってオオシラビソの姿が目立つように。
枯れたオオシラビソに着生したキタゴヨウの姿も。

ヒューヒューと口笛の様な声に辺りを見渡すと、オオシラビソのてっぺんにウソの姿。
休憩を兼ねて暫く観察。
ヒューヒューとウソが鳴く度に鳴き声を真似てみるとウソが鳴いて答える掛け合い、ガーとホシガラスの合いの手を暫く繰り返して楽しませてもらえました。

去年はオオシラビソたちは沢山の球果を着けたようで、あちらこちらに沢山の痕跡が見られました。
中には雪が降るまでに種を落としきれなかった者もいたようで、雪上に球果と種が散らばっている場面も。
これらがホシガラスやウソたちの大事な食糧となっています。

最後の登り。
日暈を纏った太陽の日差しに雪が緩み、少し足が重く感じられますが、先程からのホシガラスがガーガーと鳴きながら励ましてくれているようです。
雪面には、前日のものでしょうかスキーの跡が残されていました。

ここまででホシガラスとはお別れ。
ガーと一声鳴いて去って行きました。
日差しと雪の照り返しが眩しい中、栂森からの眺めは遠くの山並みは霞んで見えませんでしたが、それでも迫力のある絶景を堪能。
お天気が良いと雪解けの水蒸気が空気中に含まれるので空が霞んでしまうのは仕方ありませんが、それも山が春を迎えつつある証です。
この日は他に人の姿が無く、目の前に広がる景色を独り占めでした。

厳冬期も強い風に曝されるため雪がほとんど積もらない毛せん峠。
この頃の陽気で、あちらこちらで笹が顔を出しています。

顔を出しているのは笹だけではありません。
ガンコウラン、コケモモ、イソツツジなども顔を出し、日差しを目一杯浴びて春を迎える準備に入ろうとしています。

風も無いので、毛せん峠から少し下りた場所で国見台を見下ろしながら昼食。
下山するのが勿体なくなるほどの、何とも贅沢な時間です。
この時期の国見台は、ダケカンバや黒く見えるオオシラビソが白い山肌にくっきりと見えるのが綺麗です。
木々の間隔が混んでなくて点在するのが良いと思うのですが、いかがでしょうか。
秋田八幡平スキー場も見え、その遠さに頑張って歩いたなと思わせてくれます。

昼食後、国見台に登って振り返ると雪面にはくどーさんのトレースだけが残されていました。

積雪期しか登れない国見台からは畚岳や八幡平方面の景色が良く、眼下に後生掛自然研究路も見えています。

国見台を下りて森へと入っていくと、雪面に残された二ホンリスの足跡。

ノウサギの食痕、ツルアジサイのドライフラワー、クマ棚などを見ながら歩き続けると…

後生掛自然研究路の大湯沼に到着。
ここは大湯沼の西端、やはり積雪期にしか来られない場所です。
泥やお湯が激しく湧き出して少しずつ西側に移動している大湯沼の最先端です。

少しだけ高台に登って眺めた大湯沼。

振り返ると、先程まで居た国見台がドーンと構えてこちらを見下ろしていました。
随分と歩いたなあ…
楽しかったなあ…
そう思わせてくれる景色でした。

今回の下見は、これ以上ない程の好天に恵まれました。
生き物たちの活動が活発になって来た春めく山の様子と、この時期ならではの独特な雰囲気を漂わせる絶景を満喫する事が出来ました。
下見で、こんなに満喫させてもらって良いものか…と申し訳なくなる程です。
早春の気配漂う栂森。
本番当日も、美しい景色や生き物たちを始めとする様々な出会いに期待したいと思います。

     くどう