2月25日、西高東低の気圧配置の影響を受けて秋田八幡平スキー場は雪の舞う朝を迎えました。
八幡平山頂付近は強い風の予報も出ていましたが、「オオシラビソ植生日本一! 登山者の聖地・樹氷原を歩こう」を開催しました。
そもそも厳冬期の厳しい環境下だからこそ作り出される樹氷を見に出かけるのですから、見られたらラッキー。
頑張って歩いた人だけが逢える八幡平の樹氷を目指して、行けるか行けないか、見られるか見られないかの樹氷チャレンジです。

雪が舞っていますが、時々雲の向こうに太陽がぼんやりと見えたりもする中、八幡平第一ロマスリフトに乗ってスタートです。

蒸の湯休憩所を過ぎた所から、木々の間を縫うように急坂を登って樹氷原へ向かいます。

急坂を登り切って顔を上げると辺りの様子は一変。
ダケカンバは霧氷に包まれ、オオシラビソは雪と氷を纏った枝を重そうに枝垂れさせています。
「登りが大変だからって下ばかり見ていてはダメですね。」と参加者の方。
全くその通りで、標高を上げるにつれて周囲の景色はどんどん変化していきます。
その美しい変化の様子を見逃すわけにはいきません。
せっかくなので、休憩を取りながら霧氷と樹氷の違いについて説明中。

雪が弱まり、霧氷を着飾ったダケカンバたちの姿が曇り空の下に浮かび上がります。

少しずつ風を感じるようになってきましたが、雪は殆ど気にならなくなってきました。
徐々にダケカンバの姿が減り、樹氷に覆われたオオシラビソの姿が目立ってきました。
休憩の度に、スマホやカメラを取り出してしまう方々。
その気持ち、良ーく分かります。

田代沼付近では、一瞬ですが日差しも。
冬の日差しと雲が落とす影が雪面を流れると、その都度浮かび上がっては消えていくスノーモンスターたちに思わず息を呑んでしまいます。

かと思えば強風にサラサラの雪が舞い一気に視界が悪く。
とにかく目まぐるしく変化する天候の中を進みますが、厳冬期の厳しい環境下でなければ美しい樹氷は作り出されないと知っている参加者の皆さんは、そんな樹氷原の中に身を置いている喜びを噛み締めながら一歩ずつ歩みを進めます。

どんどん強くなる風の中ですが、目の前に現れるスノーモンスターたちに一喜一憂しながら藤助森を登ります。
美しい瞬間に出逢えた瞬間、風の強さや寒さも忘れてしまうのは不思議なものです。

もう少し、もう少しだけと思ってしまうのが人の心理という物でしょうか。
風に吹き付けられながらも、この先に更に広がる樹氷原を頭に思い浮かべてしまいます。
美しい光景を目の当たりにしただけに名残惜しくなりますが、あまりの強風に先に進むのは断念。
藤助森中腹で、ここまで頑張ったよと記念撮影をして下山となりました。
安全が最優先ですからね。

強風の中を頑張った皆さんの姿は山の神様の心も動かしたようです。
山を下りようと歩き始めたところに青空が広がり始めました。
山の神様からのご褒美に「わーっ!」「きれーい」「素晴らしいー」などの声が止まりません。
日差しに輝くスノーモンスターたちの姿を見て、「ご褒美ならば予定通り陵雲荘まで行きたかった…」などと思った人はいないはず。
少しの間ですが、美しい自然の造形美を堪能して帰ってきました。

今回のイベントは生憎の強風に見舞われてしまいましたが、それも山のお天気なので仕方ありません。
厳しい環境下だからこそ作り出される自然の造形美を見る為には、その厳しい環境下に足を踏み入れるという事でもあり、藤助森中腹までたどり着く事が出来ただけでも幸運と言えるでしょう。
オオシラビソの植生密度日本一の樹氷原は頑張った人だけが見られる素晴らしい光景ですが、今回の参加者の皆さんも本当に頑張って頂きました。お疲れさまでしたの一言に尽きます。
大変でしたが、山の神様の粋な計らいによってスノーモンスターたちに出逢えた事は良い思い出になったのではないでしょうか。
また来シーズン、次は八幡平山頂到達を願ってチャレンジしないといけませんね。

     くどう