青空が広がるものの、夜間に雨が降ったせいで気温も低め、雲の流れが早くて強めの風が大沼を吹き渡る中での開催に少々不安を抱きつつも、お天気の好転を期待しながら「大沼野鳥観察会」を開行いました。
漸く訪れたブナの芽吹きと共に、大沼には鳥たちの恋の季節が訪れました。
留鳥のみならず、飛来したばかりの夏鳥たちの恋の歌も風に乗って聴こえてきます。
水辺をフィールドにする者、草原をフィールドにする者、空をフィールドにする者、林内をフィールドにする者、大沼は様々な鳥を見る事が出来ます。
湿原へ出ると風は殆ど気にならなくなり日差しが暑い程。
早速、灌木の上にモズが尾羽をクルッ、クルッと回すように振りながら縄張りを主張するように辺りを見渡しています。
湿原の残雪の上から林縁の鳥を探しなが歩きます。
カケスやキジバトなどが頭上を通り過ぎて行きました。
湿原を取り囲むブナ林には、オオシラビソ等の常緑針葉樹が混じり、小さな鳥が身を隠しながら生活するには最適な環境。
オオシラビソの枝を歩くゴジュウカラを見付けました。
林を抜けて、一度沼の見える場所へ出ると、どちらもオスですがオシドリとコガモがさざ波のたつ水面をゆっくりと泳いでいます。
既にメスが抱卵期に入っているのでオスは暇を持て余してでもいるのでしょうか。
再び鳥の声を辿りながら林の中へ入り、声のする方向を見ながら鳥待ち。
この時期は、残雪の上を夏場はいけない場所に歩いて行けるのが利点。
ただ鳥を待つだけではなく、こちらから積極的に近付けるのも魅力です。
しかし、声はすれども姿は見えず…
だいぶ風を感じなくなったとはいえ、少し鳥の動きが鈍いようです。
水辺と空をフィールドにする鳥たちを待ちながら昼食。
背後のブナ林からはウグイスの声、アオゲラの声やドラミングが響いていました。
オオシラビソの中に、何やら小鳥の姿を発見。
皆で良ーく観察。
新緑の森の歌姫こと、キビタキに会えました。
まあ、歌姫と言っても、囀るのはオスなんですけどね。
この美しい色合いが綺麗でたまりません。
フライキャッチャーと呼ばれるヒタキ類。
パッと枝から飛び立ち空中の虫を捕らえ、サッと元の枝に戻るヒタキ類特有の動きも観察出来ました。
鳥たちの声に耳を傾けながら見上げた芽吹き始めのブナは、雄花がほころんでいます。
その中を少しずつ近づいてくる鳥たち。
もうすぐ解消されるであろう、カラ類の混群です。
ヒガラを見つけたと思えば、近くでコガラがブナの雄花をついばんでいます。
ハウチワカエデには尾羽がスッと長いエナガ。
気が付けば、辺りを鳥たちに囲まれていました。
ブナよりも少し早く芽吹いたナナカマドに止まるヒガラを見ていると、何だか違和感…
トレードマークの冠羽が無く、後頭部が…
まあ、これも個性という事で。
枯れ枝にゴジュウカラ、地衣に覆われた枝にはコゲラも。
どれも可愛いじゃないですか。
ビジターセンターに戻ってきたところで双眼鏡を覗き込む皆さん。
その熱い視線の先には…
ピョンっ!
軽快にジャンプするジョウビタキ。
一羽だけかと思っていたら、もう一羽登場。
着かず離れず、仲が良いのか悪いのかわからない二羽のオス。
この場所を気に入ってくれて、近くで繁殖してくれれば嬉しいのですが…
オス同士で繁殖⁉
まあ、世はジェンダーレスですから、この二羽がペアになって養子でも迎えて…
養子はカッコウの子か?
などと考えてはみたものの、そんな事はある訳なくて…
それぞれが相手を見付けられると良いなと思う次第でありました。
見覚えのある姿を見付けました。
キビタキです。
里では冬鳥であるジョウビタキと夏鳥のキビタキ、この両方を至近距離で一度に見られるとは!
冬鳥と夏鳥が同時に繁殖する大沼は、なんと素敵な場所なのでしょう。
ビジターセンター裏の泥火山にも行ってみました。
湯沼には、のんびりと過ごすコガモのペアが見られました。
今回のイベントは気温と風が気になりましたが、フィールドに出掛けると風も弱まり、昼頃には気温も上がったおかげで鳥たちの活動も活発になりました。
おかげで、じっくりと観察出来たかなと思います。
少し残念なのは、空を舞う猛禽類の姿が見られなかった事かなと思います。
上空は、猛禽が飛ぶには少し風が強かったようです。
木々が芽吹き始めたとはいえ、まだまだ見通しが利く林内ですから、猛禽が姿を現せば小鳥たちの姿を確認出来なかったかも知れませんが…
何はともあれ、夏鳥も冬鳥も留鳥も繁殖をする大沼。
彼らが命を繋いで、来年も野鳥観察が楽しめる事を願っています。
くどう