4月24日、少し薄雲が掛かるものの、日差しが眩しい春の陽気の中、「早春スノーシュー ヒミツの巨木と沼巡り」を開催しました。

開会式と準備運動の後、ビジターセンターを出発。
ビジターセンター裏の泥火山は、今シーズンも元気に活動しています。
この場所は、周辺よりも少し暖かいので木々の芽吹きも少しだけ早く進んでいます。
タムシバの冬芽は、厚いフリースを脱ぎかけています。

日々、春の装いが色濃くなる森の中、残雪の上をゆっくりと。
固く締まった雪の上は、スノーシューを履かなくても大丈夫なくらい。
とりあえず、途中にある赤川のヒューム管橋を渡るまではツボ足で進みます。

スノーシューを履いて歩く森の中は、ブナの根開けが始まっていました。
残雪の上に伸びる木々の影も綺麗です。

上空は湿度が高いようで、太陽の周りには日暈が掛かり、更に飛行機雲がその前を横切って行きます。

木々の冬芽や樹皮を食べたノウサギのフンが足元に。

開けた場所から振り返ると、3月のイベントで行ってきた国見台と栂森の姿がクッキリと見えています。

ダケカンバ林の中をザクザクと雪を踏む音を立てながら。

大きな樹洞の開いたトチの木へ。
近づいて見ると、沢山のツキノワグマの爪痕が生々しく残されています。

展望の利く場所に出ると、遠くに南八甲田連峰や岩木山の姿が。
その頂に雪を被った山々の絶景を眺めながら、暫しの休憩です。

休憩をしていると、目の前にヒガラのペアが近寄ってきました。
やたらとイチャイチャしながら枝から枝へと飛び回っていましたが、なぜかカメラを向けると距離を置く二羽。
素早い動きについていけずに、結局、撮れたのは一羽だけのシーン…
もっとカメラの腕前を上げなければ…と思うのでした。

まだまだ雪に覆われた森の中ですが、早く雪が消えた場所にはキクザキイチゲが顔を出しています。
春の日差しを浴びて、懸命に花開こうとしています。

雪の上に続くはツキノワグマの足跡。
会いたいな。会えるかな。

よんご沼に到着。
山の遅い春を告げる、沼の雪解けも進んで、水面が大きく開けてきています。
少し青味を帯びた姿が美しい沼の様子を思い出に残そうと写真撮影。

またまた撮影タイム。
被写体は、解けていく氷の水中部分が蒼く見える四合五尺沼。
上手く撮れたかな?
水面に映る木々の影も良いですね。

再びツキノワグマの足跡。
指の後までハッキリと確認できます。
森の中をのっしのっしと、ゆったり歩く姿が想像できます。

かわいーっ!
こちらはサワグルミの葉痕。葉っぱの付いていたあとです。
スヤスヤ眠る顔のように見えるのは、水や栄養を送る導管の跡。
樹種によって形が違うので、色々と見比べてみるのも面白いですね。

長沼。
ひんやりとした風を受けながら、未だに厚い氷に覆われた沼の上を歩いてみました。
※十分に安全を確認して歩いています。

沼の畔の東屋の前で昼食。
なんて贅沢な昼食でしょう。
残雪とオオシラビソとキタゴヨウの濃い緑と、枝先が少し赤味を帯びたダケカンバやブナのコントラストが最高の景色を眺めながらですから。

広い沼の上で。
さて、それでは午後の行程に入るとしましょうか。
気温も上がり、少し雪がシャーベット状になってきましたが、午後はスノーシューを脱いでツボ足で。
スノーシューの有り無しでの雪の感覚を楽しみながら帰りましょう。

オオシラビソの雄花の冬芽を食べたモモンガの食痕と、フンとオシッコの跡です。
残雪の上では、様々な生き物たちのフィールドサインが見られるのも楽しいですね。

こちらはニホンカモシカ。
大きさから、まだ若い個体の落とし物と思われます。

などと見ながら歩いてシナの巨木に到着。
周りに立つ参加者の皆さんと比べると、その大きさが良く判るかと思います。

せっかくなので、幹回りも測定。
根元から130㎝の高さで10m20㎝という太さ。
こんな大きな木が、八幡平の山中に静かに立っているなんて、凄いとしか言いようがありません。
山の中を探したら、他にも知られざる巨木があるのかもしれませんね。

こちらも大きなシナの木。
裏側に回ってみると樹洞がポッカリと口を開けていて、樹皮にはツキノワグマの爪痕ものこされています。
中を覗いてみたものの、ツキノワグマが出入りした痕跡は無く、笹が生えていました。
ツキノワグマたちは冬籠りに使えるか様子を伺いには来たものの、お気に召さなかったようで何年も使われていないようです。

斜面を登ったり下ったりしていると、眼下にツボ沼が見えてきました。
水面に張った氷は、地面からの熱が伝わりやすい部分から解けていくので、先ずは沼を縁取るように解けていきます。
ハッキリと縁取りが出来上がっていましたが、向かって左側が氷の色を映し出す水色、右側が緑色と別れているのがユニーク。

冬の間に雪で折られたブナの枝には沢山の地衣類が着いています。
サルオガセの仲間やバンダイキノリ、カブトゴケやカラクサゴケ、トリハダゴケやニクイボゴケなど、樹状、葉状、瘡状の地衣類が目白押し。
只今、カラクサゴケをルーペで覗いて観察中です。

赤川沿いに出ました。
約8㎞行程でしたが、間もなくゴールです。

今回は、春の日差しに汗ばむ程のお天気に恵まれたイベントとなりました。
長い行程ですが、残雪の森の中を歩き、沼と巨木、春めく山の様子や生き物たちの痕跡など、残雪期ならではの光景を堪能出来たイベントとなったかと思います。
この先、生命力の溢れる季節に向かって変化し続ける山の様子が楽しみで仕方ありません。
山の遅い春は、まだまだこれからが本番です。

     くどう