3月4日、「三寒四温」寒くなったり暖かくなったりと少し落ち着きのないお天気が続いていますが、おかげで少しだけですが山にも春が近づいているように感じられる中、13日(日)開催予定の「ベコ谷地スノーシューハイキング」の下見に行ってきました。
春が感じられるとは言っても山は朝方まで雪が降っていたようで、少し重ためですがフカフカの新雪の中を歩く行程となりました。

ブナたちの枝先には着雪が見られず、山の稜線が黒く縁取られて見えます。
まだ雲が広がる空ですが、この稜線の向こうに目指すベコ谷地が待っています。
チラチラと青空が見え始めているので、お天気が良くなっていきそうです。

沢伝いに森の中へ。
あちらこちらに、見応えのある大きな冠雪が見られます。

いつものこの時期ならば、ここは沢の流れが見える場所ですが、今回は雪に埋もれて見えません。
おそらく、新雪が吹き溜まって流れが見えなくなってしまったのでしょう。
不用意に近づくと、踏み抜いて沢へ転落という事になりそうです。

立ち枯れのオオシラビソ。
近づいて目を細めて見ると…

何か見えてきました。

その姿が虫ピンのように見える地衣類、ピンゴケ。
なんだか髭の剃り残しのようにも見えて、剃刀でジョリジョリとやってあげたくなります。
そんな衝動に駆られるのはくどーさんだけでしょうか…
まあ、やらないんですけどね。

たくさんの地衣類が見られるので、少し観察しながら歩いてみました。
こちらはフジサルオガセ。
ゲジゲジした長ーい髭みたいなのがブナにぶら下がっています。

葉に白い模様がみえるカラクサゴケの仲間。
などなど、特徴的なものから似通ったものまで様々な地衣類。
数が多すぎて、地衣類を見ていると時間がどれ程あっても足りなくなります。

ブナの森の中に冬の日差しが届き始めると、白く輝く雪面に木々の影がスーッと伸びていきます。

沢を越えて、畚岳が見える展望地へ。
残念ながら、畚岳は未だ雲の中に隠れていて姿を見せてはくれませんでした。
我らがもっこちゃんは恥ずかしがり屋さんですから…
かわいーっ!(≧▽≦)

勾配が緩くなり、木々の上の空が近く見えるようになってきました。
ブナたちの向こうに、ベコ谷地を囲むように生えるオオシラビソたちの姿も見えています。
もうすぐベコ谷地です。

森の中に忽然と姿を現すベコ谷地。
春になればミズバショウを初めとする花々が咲き誇る湿原は、広い雪原へと姿を変えています。
春めく日差しが落とす雲の影が、真っ白な雪原の上をゆっくりと流れていました。

日差しに、雪を纏ったオオシラビソたちが眩しく輝きを放ちます。

高い場所は風があって雪が舞っているのでしょうか、栂森と国見台が霞んで見えます。

高く聳えるように立つオオシラビソ。
先端付近の雪は落ちてしまいましたが、枝葉に雪を抱え込んでこちらを見下ろす姿は迫力満点です!

雪と風に耐えきれずに折れてしまったのでしょう、大きなオオシラビソが新雪を被って横たわっています。
冬は美しいけど厳しい…

こちらは雪に覆われながら耐えています。
「もう少し、もう少し…
もう少し頑張れば春が来る…」
そんな声が聞こえてきそうです。

オオシラビソを覆う雪から下がる氷柱は冬が流す涙。
厳しくも美しい姿を見せてくれた冬が、ゆっくりと近づく春を感じながら「もう、季節は移りかるのね…」と静かに流すお別れの涙なのです。

大きな冠雪も、冬が創り出した自然の造形美。
もうすぐ見られなくなると思うと、何だか名残惜しい気がします。

大沼を見下ろす展望地へ。
氷と雪に覆われていた大沼の水面が顔を出し始めていました。

秋田八幡平スキー場を有する山毛森や奥に広がる樹氷原も望めます。
手前に見えるブナは冬芽が膨らみ始めているのでしょうか、やけに枝先の色が目立つ気がします。

暖かい日が差す、静かなブナの森の中をゆっくり歩いていると、眼下に澄川が見えてきました。
もうすぐゴールです。

今回の下見は、太陽と雲と雪が織りなす光と影の世界を体感することが出来ました。
また、普段は気に留める人の少ない地衣類を容易に観察できるのも積雪期ならではだと思います。
これを機に、地衣類に興味を持って頂けたらと思っています。
少しづつ春は近づいてはいますが、まだまだ寒い日が訪れたり雪が降る日もあります。
季節の移り変わりを感じつつも、八幡平で雪の山を楽しみましょう。
山はいつも同じように見えても、必ず毎回違った表情を見せてくれます。

     くどう