茶臼岳の巡視はまた快晴です。登り口では樹氷はないし、霧氷も落ちましたよ。との情報がありましたが、それよりも雲一つない快晴が申し訳ないぐらい・・・
本日もキャットで大黒森と恵比須森の鞍部まで移動して、登りの登りの時間を2,5時間ほど短縮しています。
快晴の天気に誘われて見るもの全てが新鮮。ふと見入ってしまったのがこれ。枯れたオオシラビソの幹が割れて、突き出た枝のとりつき部分が見えています。枝の根元部分は木の中心部より始まっており、この木が幼木であったころからの枝、ということになるのでしょうか。
前回の巡視の時は雪に半分隠れていた恵比須森山頂の規制看板は雪解けとともに角材の足が長く見えていました。暖かな日差しの心地よさが春の到来を感じさせてくれます。
天気が良いからという訳ではありませんが、本日は黒谷地湿原北東側の沢を進むことになりました。
どこまでも広がる蒼い山並み、パッと目に入るのは正面に遥か八甲田連峰、中央やや左に五ノ宮嶽と皮投嶽が、その手前に八森山塊がわかります。
黒谷地湿原北東側の沢を見おろす縁の所から、今度は白く輝く岩木山が見えてきました。視界をさえぎるものがない、どこまでも続く蒼い山並みです。
そして今度は黒谷地湿原に向かっています。黒谷地手前の沢の浅くなっているところを横断しています。
横断した沢の一番深い所の眺望ですが、実は見ていたのはこれ。何本も立ち上がっているオオシラビソのひこばえ?それとも元気な枝が立ちあがったもの?肝心な部分は雪に覆われているので見えませんが・・・
ヒト的な解釈をすれば思い浮かぶ表現があると思いませんか。この木の半生を語ってみてください。
イマジネーションタイムが終わり、再び前進。前回は正面からの風雪でいじめられた黒谷地湿原に到着です。
時々見えていた畚岳がバ~ンと見えています。
何だっけあの山は?と思うほど近くに見える秋田駒ヶ岳。思わず出た相棒を呼ぶ声は「秋駒ちけぇ!」でした。
そして今度は、岩手県から眺める秋田・山形県境にそびえる鳥海山。
秋駒は直線距離で24,5㌔程、鳥海山はどれぐらいの距離になるのでしょう。
オオシラビソの枝先に残る樹氷の痕跡を見つけました。冬の八幡平に出現する樹氷”アイスモンスター”の種(?)です。春のような日差しの中で、よく残っていたものです。
茶臼の避難小屋が見えてきました。前回はダケカンバの霧氷姿が出迎えてくれたのですが、さすがにそれは望みません。
とりあえず小屋で昼食を摂り、午後からは茶臼岳山頂、茶臼登山口を経由して出発地の御在所に下山しようと思います。
ちなみに、外気温はどれくらいであったのか、小屋の室温は-3℃でした。
ガリガリの斜面は大変だろうなとは思っていましたが、案の定です。スキーが何の抵抗もなくサ~ッと横滑りをする始末、ほとんど氷でした。
ここにも樹氷の痕跡。
いつもながら岩手山と早池峰山はここでもお出迎え。
しかし、ここからの眺望に感激はしたものの、問題はこのガリガリをどう降りるか、だったのです。
一応、スキーのシールは外して男は度胸とばかり・・・
何とか降りてきた茶臼岳登り口はこんな様子でした。
鮮やかなターンはとても無理無理。斜滑降メインの安全重視、うねに見える高い部分はガリガリ、それが斜面の縦じま模様となり、もう若くはない私の膝をガタガタといじめるのです。転んだら滑落という予感が頭をかすめました。
もう、楽しくはありません。
そして、この非情のテカテカでついに転倒、頭を下にして15m程滑落してしまいました。滑りながらストックを突き刺そうと頑張っていましたが、幸い事なきを得、どうにか止まることが出来ました。こんな条件はオリンピック選手級と誰かが言っていましたが、まさにその通り。
今年の茶臼岳巡視で何がきつかったかと聞かれたら、吹雪でもラッセルでもなく、迷わず”今日のガリガリ”と答えると思います。
それでも、今日の眺望のすばらしさは誰かにも見てほしい、感動を共有したい景色だと思いました。厳冬の厳しさを見ているからこそ春のような日差しがありがたく、山の色と木々の姿に茶臼の春を感じずにいられませんでした。この喜びは下りのガリガリの苦心にも勝るものと思ってしまいます。
あべ
ガリガリが中心になってしまった気がしますが、規制区域へのスノーモービル乗り入れは今回、茶臼岳登り口から登山道に残ったトレースを1カ所確認しました。残念ながら、まだ徹底されていない部分もあるのかもしれません。