八幡平と茶臼岳で行った冬山巡視も今回の茶臼岳で最後となります。目的はスノーモービルの乗り入れ口に規制看板を取り付けて規制を周知すること、また実際に乗り入れがあるかなどの確認が主なものです。
暖かな日差しは気持ちのゆとりとなり、この森の春の息吹を感じさせてくれます。本日もキャットは故障中。プラス二時間半の鞍部までの登りの時間がオプションとなりました。
ここ2,3年はキャットの車窓から眺めていた大岩ですが、この岩にしがみつくように根を張ったコメツガの生涯について汗を拭きながら、想いを馳せています。
そしてまた、ネジくれたオオシラビソのある風景。
木の根元を寒さと風から守っていた雪布団がその役目を終えたかのような姿に。
恵比須森から見た黒谷地東側の斜面には新しいスノーモービルのトレースは見えませんが、先回の巡視で見た、たくさんのトレースの確認に向かいました。
正面には秋田側の五ノ宮嶽、皮投嶽、うっすらと青森県の八甲田連峰が見えます。
新たなトレースはやはりありませんが、オオシラビソを切り倒した現場を見つけました。スノーモービルが通り抜ける際に邪魔だったので切り倒したということのようです。残念に思いますが、悪質といわざるを得ません。
後味の悪い思いをオオシラビソの去年の球果のジクがホッとさせてくれます。この辺りでは山盛り一ぱいの球果を付けた姿を毎年見ます。雪面から突き出ている木たちは背も低いので”若い木”と思っていましたが、先ほどの切られたオオシラビソの年輪を数えると60年ほどは立っているもののようでした。
今年も一ぱい付けたもんだから、中には落ちるのを忘れた種もあったようです。
そして、この景色を見た時に”八幡平はオオシラビソ植生密度日本一”ということを思い出しました。どの場所の密度のことを言うのか正直わからなかったのですが、このあたりもそうなのかな、と初めて思いました。
風が強くて木たちには強いストレスがかかり、枯れたり倒れたり。だから木たちは子孫を残すために毎年のように種(球果)をつくる。そんな場所とはこんな風景なのかなと思ったのです。単位面積当たりのオオシラビソの本数の多さとは、その定点が複数個所あって、その平均値を出すなどの方法なのかと想像しますが、調べてみたくなりました。
気温の上昇と共に樹氷などはすっかりありませんが、昨日あたりの雪が霧氷となり、オオシラビソの枝を魅せてくれます。コンペイトウのようだと表現したら、私にはアイシングクッキーのように見えるといわれました・・・
ま、それはそれで。昼をかなり過ぎてしまいましたが、ようやく茶臼避難小屋で昼食です。
茶臼岳と岩手山がそこにいます。
お天気に誘われてか、私たちと入れ替わりに小屋に到着のお二人に挨拶をして帰路につきました。
振り返ると茶臼岳東側の斜面にクラックが入っていました。
登りの行程中も雪質を気にしていたのですが、エッジが効かないほどの固い斜面、湿っぽい新雪などころころ変わる雪質に頭から転倒すること3回。難儀をしました(写真を撮られました)。それでも山の陰から響いてくる春山除雪の重機のエンジン音、御在所沼の景色を眺め、八幡平の春の到来を実感してしまいます。
国立公園、特別保護地区へのスノーモービルの乗り入れについては、残念ながら今年も確認されました。来年の巡視ではコースを変えて、などの変更があるかもしれませんが、まずは終了ということでホッとしています。
巡視は業務ですが、冬山を歩く楽しみがあるのも正直なところです。
あべ