冬山巡視八幡平は今回で二回目、先回は濃霧で視界が効かなくて、ただ行っただけでした。本日の天気は全国的に晴れ、樹氷は正に見ごろのこの時期、八幡平にはいったいどんな景色が広がっているのでしょう。

秋田八幡平スキー場の駐車場には、まだ営業前というのに車がずらり、どの方も”樹氷ねらい”に違いありません。

ラッセルとは、さて何のことやら。大勢の人が歩くことでトレースは堅く踏みしめられ、ツボ足の方も見受けられるほど。秋田県側樹氷原の入り口は只今渋滞中! この天気ですもの。

今シーズンこんな天気は私たちにしても初めてです。登るにつれ、景色は霧氷から樹氷姿へ変わっていきます。暖かさゆえ、Tシャツ姿の方も見受けられます。

樹氷よし!ラッセルなし!風もなし!という最高の条件、どの登山者も満面の笑顔、歓声が聞こえてくるような気がします。

なだらかな雪原のちょうど真ん中あたりが八幡平の頂上です。

と、期せずして東側からパンパンとスノーモービルのエンジン音が聞こえたため、私たちは登山道から外れ、音のする方向へ進んでみました。音は時折聞こえるのですが姿は確認できません。

あまり来ることのない場所から再び前進、八幡平山頂を目指しています。

八幡平山頂は登山者がいっぱい。こんな日に来ることが出来た幸せ者の人たちです。時計を見て、もう昼なのに気づき、私たちも昼食です。

とりあえずですが、午後の巡視のために小屋どまりの用具が詰まった重いザックから解放されたくて陵雲荘に向かいます。

陵雲荘は大混雑と思ったのですが、おや貸し切り!といった意外な状態。ちょっと驚きでしたが、この天気ですもの。

日が当たって樹氷の影と雪面のうねの影。雪に覆われて地表の凹凸はマイルドに消されて八幡平らな雪原に。

源太森の山頂は八幡平の真っ平らを確認できる場所。こんな景色を360度のパノラマを楽しめる場所です。ここからだと先程のパンパン音がしたスノーモービルのトレースを確認できるかな、と思ったのです。北東側の杣角山の東斜面にスキーかな?というトレースが見えますが遠すぎて確認出来ません。

八幡平山頂方向を見ても真っ平ら。写真のちょうど真ん中から右寄りのあたりが頂上です。

身軽になった私たちはこの源太森から見返り峠に出、ガマ沼の西側を通ってメガネ沼、鏡沼を通って1日目の巡視を終える事にしました。吹雪かれたら厳しいでしょうが、この天気ですもの、歩かないともったい無いとは誰しも思うはずです。

少し進むとまた新たな樹氷原。そしてまたという繰り返し。さすがに見返り峠が近くなるとぽっちゃりした樹氷さんはシャープさが増してきます。雪面も強風にさらされて立体的、息を呑むようなシュカブラがそこかしこ。雪を削り取るノミのような風が抜けた痕跡です。

見返り峠の公衆トイレの屋根が見えてきました。ここは風の強いところなのですね。ノミのような風はあっちから来てこっちに抜けたんですね、と一目瞭然。

明日の巡視予定の畚岳周辺を見ていますが、畚岳こそ風の強い所なので、もちろん巡視ではありますが、八幡平山頂周辺の樹氷との比較が楽しみです。中央下に見えるのは雪に埋もれたパークサービスセンターとレストハウスです。

ガマ沼の西側を歩いて樹氷三昧。風下側に傾いだ個性的な樹氷さんたち。ここいらの樹氷は枝の飛び出たヤツはいません。

そして、そろそろ夕景。樹氷越しに鳥海山を望遠レンズで狙うというカメラマンの方、同じく夕景の岩手山を狙うという方が一人。ジッとその瞬間を待っていました。

夕景は一日の終わり、どこやらホッとする景色。

陵雲荘に泊ったカメラマンの方は4時には動き出し、日の出の景色を撮るのだそうでランプを灯して出かけて行きました。私たちもちょっとだけ、朝日が当たった八幡沼展望台付近です。

巡視二日目、本日の予定は畚岳中腹付近から藤七温泉、樹海ライン沿いにスノーモービルの乗り入れがあるかどうかの確認をすることが目的。さて、ここは見返峠の駐車場。ここから畚岳の登山口を目指します。

見返峠駐車場はエビの尻尾だらけ。人工物を覆いつくしています。

駐車場南西側の展望台はご覧の通りの雪のかたまり。昨日は頂上のあたりしか見せてくれなかった鳥海山も今朝は裾の方まで見せてくれています。

オオシラビソのツリーホールをさけて樹海ラインに出ると畚岳とそれをとりまく樹氷群がバーンと広がります。

登り口に到着。風が強いので、この辺りの積雪は1mほどでしょうか。道標が頭を出しています。

「いゃ~すごい」と何回言ったっけ?と話していますが、俗っぽい私たちにはこの光景を表現する適切な言葉を知りません。何を言っても陳腐な使い古した表現になってしまいそうです。風が少々、寒くなく、ラッセル無し、眺望はこれ以上はなし。という日に来ることができた喜びが、ふふふ、と腹の底からこみ上げてくるようです。

急いだら、八幡平山頂を経由してこの畚岳に来ることはできるかもしれませんが、小屋泊りしたが故の時間と気持ちの余裕です。

八幡平山頂周辺の樹氷とも一味違うシャープな樹氷が私たちを迎えてくれているようです。あえて荘厳なとでも表現しましょうか、”生か死か”とか生き物の存在を否定するかのような世界。でもそんな光景の中にウサギの足痕が何とも、この世界にホッとする”生”を感じさせてくれていました。

藤七温泉は雪に覆われ、樹海ラインを示す竹竿がところどころに突き出ている。という景色でした。パンパンとエンジン音がしませんようにと念じつつ戻りの行程につきました。

あとは見返峠まで登りを頑張って、陵雲荘で荷物をまとめて・・・

これ以上の天気はないという日に恵まれ、最高の樹氷にも歓迎され、小屋泊りの荷物が少々重かったとはいえ、あの景色を鑑賞させていただいたということに比べれば・・・

国立公園内の核心部にある特別保護地区はスノーモービルの乗り入れが禁止されています。自然公園法違反ということになります。ご注意ください。

さあ、次回の冬山巡視は茶臼岳です。

   あべ