冬山巡視の茶臼岳は三回目となりました。期待はしていませんが、御在所から見る茶臼岳方向は強い風が吹いて視界は悪いようです。気分的にもテンションが今一つ上がりません。

本日もキャットを利用して快適に恵比須森の鞍部まで移動して楽をしました。さて、スキーを履いていよいよ巡視開始。

新雪が15センチほど、視界不良で岩手山も茶臼岳も見えません。黙々と進むのみですが、視界が悪いため恵比須森で判断しますが、黒谷地湿原には行かないで茶臼避難小屋に真っすぐ向かうかも知れません。

古くなった指導標が見えています。天気が天気が良ければこの辺りから右側にに進んで黒谷地湿原を目指すところですが、この天候では無理は出来ないと判断し、茶臼避難小屋を目差すことにしました。

痛いほどの風ではありませんが、視界が悪い分、休憩がてら、木たちの霧氷姿や自然の造形美に見入ってしまいます。

共感してくれる人はいませんが、自然の造形美をながめて独り言・・・

そして、深くなったツリーホール。雪布団をかぶったオオシラビソは風の直撃をさけることができています。突き出した枝先はもしかしたら風にさらされて、”シモヤケ”は大丈夫?

このオオシラビソには物語があります。幹が立ち枯れてしまい、元気な息子たちが5本も6本親の代わりにとばかりに立ち上がっているように見えませんか。”主幹が枯れて1本2本の元気な枝が立ち上がる”という姿は見ますが、兄弟たちが一斉に立ち上がった姿は感動的でもあります。と、この木の半生について誰もいませんが語っています。

ツリーホールを避けながら、何とか茶臼避難小屋が見えてきました。

屋根の雪は吹き飛ばされるので小屋の屋根は積雪ゼロ。ついでに小屋の風上側も積雪ゼロ。小屋は暖房はないので室温は氷点下でしょうが、風はないので入った瞬間は暖かく感じることができます。

風はそれほど強いわけではありませんが視界が悪く、正面にいるはずの茶臼岳は全く姿を見せてくれません。

結局、小屋で休憩をして下山、スノーモービル乗り入れ禁止の全看板4カ所の確認をすることにしました。

小屋の入り口は雪で覆われており、雪寄せをして・・・という具合です。

もう帰りの行程です。風からもラッセルからも解放されて、少々リラックスしています。まるで盆栽のようなコメツガも雪の重さに鍛えられて腕(枝)がずいぶん太くなっています。

どうしても見たくなるオオシラビソの球果。種は未登熟だったの?だったら付けなければよかったのに。とは自分サイドの言い分、彼には未登熟でも実を付けなければならない事情があったのかもしれません。でも、どうしてなんでしょう。実を付けることはずいぶん体力(木力)を使うことのように思うのですが・・・

突然陽が射して、「おお~!」。ダケカンバさんは芸術的な枝ぶりを雪面に写しています。

そして、茶臼岳がモヤ~とその姿をようやく見せてくれました。

キャットのトレースが見えてきました。雪質は気温の上昇と共に刻々変わり、新雪の部分に入ると重く、トレースに入るとガタガタ。

登り口の御在所が見えてきました。右側の斜面には小規模の雪崩の跡が見えます。

苦手な雪質。かっこよくテレマークターンを決めたいところですが、誰かに見られたらちょっと恥ずかしい安全重視のボーゲン滑降です。

青空が次第に広がり、御在所沼と五色沼が見えてきました。下山後は規制看板を取り付けた松川、柏台、松尾八幡平VC脇、安比スキー場に看板の確認に出かけるとはいえ、正直なところ少し後ろめたく思ってしまいます。

茶臼岳周辺の斜面では2/27に雪崩による負傷者、その後にも八幡平の樹氷原に出かけた方が悪天候で遭難し、捜索隊に発見、救助されるということがあったそうです。冬山のリスクについて知識と装備と体力を持ちたいものだと思っています。次回は3/5、6日の八幡平・畚岳の巡視です。

   あべ