今年も八幡平地域の冬山巡視が始まりました。

スノーモービル乗り入れ規制と利用者への普及啓発のために八幡平地域では茶臼岳と八幡平で2月と3月に行われています。

暖かな日差しがオオシラビソの枝先の霧氷の痕跡を落とそうとしています。今日はとても暖かい日、この前の猛吹雪はどこへ行ったのでしょう。

毎年恒例のスノーモービル乗り入れ禁止の看板の担ぎ上げ。風もないので振られもせず、本日の茶臼岳巡視の課題です。恵比須森まで運びます。

恵比須森山頂から先は国立公園の特別保護地区でスノーモービル乗り入れを規制する区域です。

本日の任務終了と思ったら、天気がいいので「黒谷地」までは行くということになり、また歩き始めています。

天気に誘われてなのか、動物たちの足跡が一杯。これなんかは名付けて”ウサギとテンの交差点” いったいどんなドラマがあったのでしょう。

シュカブラ(風雪紋)自然の芸術と感心していると、強風の吹き荒れるこの山の住人のチョンチョンと付いた足跡が愛嬌。ウサギかな?

茶臼岳への尾根をそれて黒谷地湿原へ向かっています。オオシラビソの間を吹く風は雪を吹き飛ばし、うねうねとした段を作ります。これもまた自然の芸術。

黒谷地湿原は冬の指導標がお出迎え。芸術的な枝ぶりをしたコメツガに取り付けられた188番です。

ただただ広い湿原を地平線の切れる(?)ところまで進んで右。これがいつものコースです。

”地平線が切れる”とは、この沢のことで、黒谷地湿原の北側のこの沢伝いにスノーモービルの乗り入れがあったのだそうです。

空腹を感じながら茶臼避難小屋を目指しています。オオシラビソの若い木たちの間を進んでいると、大きな木はなぜないのだろうかということに気が付きました。八幡平山頂周辺のオオシラビソは平均80年程しか生きないとか、するとこの辺りは・・・と思ってしまいます。折れた木や枯れた木が時々ありますが、更新の早い森なのでしょうね。

風よけの雪の中から頭を突き出したオオシラビソの幼樹。”頭は冷やせ”ということなのでしょうか。

こちらのこれもなんと芸術的なのでしょう。右側はスキーのトレースですが、丸いちっこいヤツは誰かの足跡。ちっこいヤツのわずかばかりの踏圧で締まった雪を残して、風が左右に抜けてできた模様に思わず見入ってしまいます。

黒谷地湿原から見る、遥か八甲田連峰。

腰のあたりを包んでいた雪布団が何かの拍子に”ぱっくり” 厳冬期なのに、まるで春の景色のようです。

雪から頭を突き出したオオシラビソに何のご用があったのかウサギが立ち寄ったようです。

こんどはオオシラビソ越しに畚岳が見えます。この方向から見ると白い巨人の後ろ姿に見えませんか。もし、そうならこの巨人の身長は1577mということになります。

もし、彼が振り返って見つかったらどうしましょう?

さて、茶臼避難小屋に到着。小屋はテレマークスキーの皆さんで満員のようです。こんな日は風をよけ、景色を眺めながらの昼食はいかがでしょう。すごい贅沢ですね。そんな方たちも大勢いたようです。

茶臼岳北東側の斜面はテレマークスキーの皆さんのトレースが一杯。この急斜面は割と難易度が高いのだそうで、午前中はまずまずの雪質でも、晴天の午後とか風の強い日は雪質が変わるので”オリンピックの選手級”という難易度でもあるのだそうです。

吸い込まれそうな青の世界に見入る工藤氏。聞けば戻りのことを心配しているのだとか。

雪は湿り加減。キャットのトレースはガタガタ。誰も滑っていないところが安全滑走の条件。茶臼に来るたび、こんなに滑れなかったんだっけ?と自信を無くしてしまいます。それでも1回目、なんとか終わりました。

吹雪けばつらいところ、晴天はこの絶景。次の好天を期待する前に、まずは今日の晴天に感謝です。厳冬期とはいいながらも春を感じさせてくれる日でした。

   あべ